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証券化商品格付けの変動性

先日、Moody’sが証券化商品の格付けに関連するレポート(“Introducing Assumption Volatility Scores and Loss Sensitivities for Structured Finance Securities”)を発表した。昨年の夏以来、多くの証券化商品が格下げされて各方面から格付会社に対する批判が相次いだが、今回発表した内容はそうした批判を踏まえてより市場で受容される格付けのアプローチを模索する動きの一つである。

年初来、Moody’sはファンダメンタルズの分析を主とする企業格付けと、モデルによる分析を主とする証券化商品の格付けについて同じ格付け符号を用いることの是非について、市場参加者に広く意見を求めていた。意見を集約した結果、例えば”1~21”といった数字や”Aaa.sf”といった記号を証券化商品の格付けに用いることには大半の市場参加者が反対した。格付け符号が変わると、証券化商品を保有する市場参加者はリスク管理モデルや法的な契約書等を一斉に見直し・修正を行なうことを迫られ、それなりのコストがかかることが予想される。格付け符号を変える代わりに、信用リスクを示す現状の符号に加えて、格付けの変動性に関する新たな追加情報を提示することになったようだ。サブプライム問題の発生以来、格付けの安定性に対して信頼が失われていたことを考えると、ごく自然な流れと言えよう。

追加情報の一つはAssumption Volatility Scoresと呼ばれ、主に格付けモデルの前提条件についてどの程度不確実性があり、その結果将来どの程度格付けに変動性が見込まれるかを示すスコアである。言ってみれば、「この案件はとりあえずAaaと格付けしますが、格付けの前提について自信がない部分もあるので、将来結構動くかもしれませんよ」といったような情報であろう。このスコアを決定する上で考慮されるのは、(a)当該アセットクラスの過去の格付け実績、(b)過去データの量・質的充実度、(c)仕組みの複雑さや担保の時価変動の影響の大きさ、(d)当事者間の利益の相反の度合い等の4つであり、これらを考慮して格付けの変動性が(i)低い、 (ii)低い/中程度、(iii)中程度、 (iv)中程度/高い、(v)高い、の5段階評価が提示される。憎まれ口を叩けば、(a)から(d)のようなポイントは慣れた投資家であれば従来から証券化商品を購入する際に必ずチェックする項目であり、特に真新しさは感じない。重要なチェック項目がより明示的になることによって、証券化市場の新規参入者等にとっては有益な情報となるだろう。ただし、異なる案件を相対化する上では役に立つと思われるが、このスコア自体もあくまでも格付会社の主観的な意見であることを忘れてはならない。「このアセットクラスの格付けは過去において安定的であり、過去データも10年もあり、仕組みは単純で、バランスシート型だから利益の相反がないため、格付けの変動性は低い」といった意見は、いかにも主観に満ち溢れているではないか。

もう一つの追加情報はLoss Sensitivitiesと呼ばれ、格付けのパラメーターの中でもっともウェイトが高いとされる期待損失率に(95%の信頼区間の)ストレスをかけた場合、どの程度格付けが下がりうるか、そのセンシティビティを示したものである。このレポートに示されたモデルケースでは、95%信頼区間のストレスによって、RMBSを裏づけとするCDOのジュニアAAAは6ノッチ、プライムのオートローンのABSのAAAは2ノッチの格下げが見込まれている。投資判断を行なう上で有益な目安となると思われるが、95%の信頼区間が妥当であるとは限らず、また、期待損失以外にもアセット間のコリレーションやデフォルト時回収率の変化によっても証券化商品のパフォーマンスは大きく左右されうることも念頭に置く必要はあるだろう。

このレポートの中でMoody’sは証券化商品格付けの難しさとして、一定の前提の基に損失分布を描いてもそもそもその損失分布の形状が正しいとは限らず、格付けの変動性が高くなることがあると率直に認めている。目標とする格付けを付与する際にこの点を考慮して信用補完を多めに設定すると、付与された格付けが保守的過ぎることにもなるが、言うまでもなく格付け記号はその対象がデフォルト等を起こす可能性を示しているものであり、保守的であればいいというものではない。いずれにしても、金融工学の技術をどんなに高めても数字ですべて把握できるという次元に到達することは不可能であり、格付けにしてもVARといったリスク指標にしてもあくまでも一つの目安として認識し、記号や数字に表れないリスクや商品性の魅力をかぎ分ける能力が重要なのだろう。

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2008.05.18 | Comments(0) | Trackback(0) | 市場雑感

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