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歪められて伝わる発言

いつも参考にさせていただいているこの方のブログで初めて気がついたが、先日のAlan Greenspanの発言は日本では”歪められて”報道されていた。

原文:Greenspan said he was "partially" wrong in opposing regulation of derivatives...

日本語訳:デリバティブの規制に対して反対の姿勢をとってきたことが「特に」誤りだったとの認識を示した。

"partially"と"particularly"を間違えたものだろう。彼は「すべて」誤りだったと言っているわけではなく、ましてや「特に」誤りだったなどと強調もしていない。「部分的に」誤りといっているわけで、行間を読めば、「がんじがらめの規制はよくないが、完全な自由にも問題があった」といったニュアンスだろうか(本人に確認したわけではありません)。

単に翻訳者の目の錯覚なのか、先入観を持って読んでいたために起きた間違いなのかは定かではない。まさか、"partially"と知っていて、意図的に誤訳を広めていたなんてことはないと思いたいが、、、。

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2008.10.29 | Comments(2) | Trackback(0) | 市場雑感

今夜のBlues

RC時代の名曲 「軽薄なジャーナリスト(作詞・作曲 忌野清志郎)」を久しぶりに聴いた。


軽薄なジャーナリストにはなりたくない
いくら落ちぶれてもなりたくない

軽薄なジャーナリストはTVにでて
軽薄な指示通りに台本を読み
そしてギャラをもらって家族を養う

軽薄なジャーナリストはいい服を着て
何も知らない人にうそをつく
そして安全なところからただ見ているだけ

軽薄なジャーナリズムには乗りたくない
軽薄なジャーナリズムはゴシップに飛びつき
適当に騒いでトンズラ決め込む


清志郎、今日もBluesと闘っているかな。



2008.10.29 | Comments(0) | Trackback(0) | Blues

週明けの雑感

金融市場の下落が止まらない。ここ数日、反転しないまでも雰囲気的にそろそろボトムで横ばいかと何回か思ったが、まるで予想が当たらない。

・レバレッジッドローン市場は下落基調を継続、欧州のインデックスLevXは80を下回るところまできてしまった。デフォルト率の上昇・担保価値の下落というファンダメンタルズの要因に加えて、破綻した銀行やファンドからの売り物や、マーケットバリュー型のCLOの清算など、供給過多な状況が続いているようだ。CLOの値下がりが気になる。

・CDS市場も、インターバンクでは9月は過去最高に近い取引件数だったが、さすがにここ最近は流動性の低下が目立ち、インデックスなどでもbid/offerがいつになくワイドだ。iTraxx Japanが300を超え、iTraxx Xoverが900を超え、エマージング銘柄もぼろぼろ。こういう時は何かがきっかけで大きく反転するものだが、トンネルの先になかなか明かりが見えない。

・Agency債が欧米とも売られやすい状況のようだ。北米では、FHFAがわざわざ”GSE債はexplicitly guaranteed”という発言を”effectively guaranteed"と修正したことが、市場参加者をナーバスにさせる要因らしい。”実質保証”という神話が崩れた後でもやはり”実質保証”のままということか。欧州ではBarclaysが先週3年30億ユーロの政府保証債をL+25で条件決定した。今後も他の銀行の政府保証つきでの起債が予想されることから、需給の懸念からかKFWのような既存のAgency債のスプレッドが広がっているようだ。英国政府は英国銀行の社債に保証を付けるにあたって、保証料として『過去1年間のCDSスプレッドの平均+0.50%』を受け取るとのことだ。妥当な保証料を決めるのは難しいが、英国政府はCDS市場のプライシング能力を信頼していることの裏返しともいえようか。

・カウプシング銀行のサムライのデフォルトが確定した。市場参加者であれば、数週間前に国有化されて「国内の預金のみを守ります」という宣言が出た段階で覚悟していたことであり、利払い日や支払い猶予期間の終了日に払い込みが行なわれずにパニックを起こすことはあるまい。CDSのイベントも同様で、国有化の段階でリカバリーはきわめて低いことは織り込み済みであるが、11月上旬の入札、11月中旬の決済日あたりにまたマスコミは騒ぐのだろうか。「カウプシングがデフォルトした。CDSは相対取引で誰がどれだけリスクを持っているかわからないため、市場は疑心暗鬼に、、、」という論調をあきるほど聞いた・見たが、じゃあ社債やローンなら誰がどれだけリスクをとっているかよくわかり、透明性が高いために安心感がある、とでも思っているのだろうか?

2008.10.28 | Comments(0) | Trackback(0) | 市場雑感

クレジットイベント決済(WaMuとIceland3銀行)

 北米の大手保管振替機構のDTCの親会社であるDTCCは、Chapter 11を申請したWashington Mutual, Incと国有化されたIcelandの銀行3行(Kaupthing, Landsbanki, Glitnir)を参照するCDSに関するデータを公表した。Washington Mutual, Inc(シニア)については、ISDAがアレンジするクレジットイベント決済プロトコルに批准した当事者同士のCDSでの最終価格を決めるオークションが10月23日に行なわれ、57%という最終価格が決定し、この結果プロテクションの売り手はプロテクションの買い手に元本の43%を支払うことになった。Iceland3行については11月4日,5日,6日に同様のオークションが予定されているが、状況的にこちらの最終価格は極めて低い数字になりそうだ。

 DTCCが発表した数字は以下の通り。

<Washington Mutual, Inc>

・数字は10月23日時点でDTCCにブックされるWashington Mutual, Incを参照するシングルネームCDSに関する数字である。9月にイベントが発生して以来、売り買い両建て取引の相殺・解約作業後が積極的に行なわれていたが、これは作業後の数字となる。インデックスを参照するCDSについては現在集計中のようで、現金決済日までに公表するとのことである。

・グロスの元本は約410億ドル

・ネットの元本は約29億ドル

・プロテクションの売り手から買い手に支払われる金額の合計は約13億ドル(29億×43%)


<Icelandの銀行3行>
・同様に、以下は10月にイベントが発生して以来行なわれた売り買い両建て取引の相殺・解約作業後の数字。オークションの日までにさらに相殺作業が行なわれる可能性もある。

・グロスの元本は、Kaupthingが343億ドル、Landsbankiが192億ドル、Glitnirが175億ドル

・ネットの元本はKaupthingが38億ドル、Landsbankiが18億ドル、Glitnirが20億ドル


ということで、Icelandの銀行3行については、今後相殺作業が行なわれず、かつ最終価格がすべてゼロであった場合の決済額は76億ドルが上限となる。取引の大半はユーロ建てと思われるが、果たしてこれがユーロ高をもたらす原因になる(とマスコミが報じることになる)だろうか??

Lehmanの時に書いたことの繰返しであるが、WaMuにせよIcelandの銀行にせよ、その破綻によって社債保有者・融資の貸し手・CDSのプロテクションの売り手・シンセティックCDOの投資家等は保有する商品タイプにかかわらずに損失を被る。損失を免れるのは(損失が軽減されるのは)リスク管理として保有する社債や融資などとの見合いでCDSでプロテクションを買っていた参加者になる。シンセティックCDOについては、度重なるクレジットイベントの発生や今後の予備軍(モノライン、不動産関連、自動車関連、EM関連などなど)を考えると、Super Senior以外のクラスは状況的には厳しいと思われる。一刻も早い市場の安定を祈るばかりだ。




2008.10.25 | Comments(0) | Trackback(0) | CDS

Central Counterparty

 金曜日の朝、自宅の郵便受けに間違えてスポーツ新聞が紛れ込んできたと思ったが、よく見直すといつもの経済紙であった。1面トップを飾るのは、金融機関の損失処理を促すためにCDSのCentral Counterparty (クリアリング)を設立する動きが日米欧で始まった、という究極の勘違い記事であった。ブログで“あげ足”を取るだけでは不十分で、不買活動でも起こそうかと周りの先輩に声をかけると、「いまどきお金を払ってこの新聞を買っているのはおまえだけだ」と言われてしまった。

 憎まれ口はこの辺にしておこう。しょせんは取引をしたことも実務の現場を見たこともない記者が、取材で聞いた話を自分の主観に沿って組み立てているだけなのだ。私だって、野球をやったこともないのに、裏事情も知らないのに、北京オリンピックでの星野ジャパンの惨敗を見て、飲み屋であそこはああすべきだったと講釈をたれているのだ(星野さんごめんなさい)。それと同じと思えば腹も立たないが、問題なのが“勘違い記事”によって日本中の金融機関の実務担当者が役員などから「これどういう意味なんだ」と質問され、この忙しい市場環境の中で貴重な実務の時間を割いて説明をさせられているという実態だ。

 前日の木曜日には東京で行なわれたISDAのコンファレンスで、金融庁・日本銀行・民間の金融機関などから多数の関係者が集まり、この1年間何が起きたのか、何が問題だったのか、デリバティブ市場をより安定的なものにするのにはどうすればいいのか、CDSのインフラ整備の話も含めて官民で議論が行なわれた。日本銀行の方からは、「クレジット・デリバティブは”自動車”のようなもので、使い方を間違えると事故も起きるが、自動車自体が悪いわけではない」といった趣旨の発言もあり、日本の規制当局の方々の理解度の高さが示されていたが、そんな中で“一流”メディアの理解度の低さや用語の使い方における品のなさが際立つ。

 相対のデリバティブ取引等において各当事者の間に入るCentral Counterparty(以下“CCP”)は一義的にはカウンターパーティーリスクを軽減する目的で設立されるものである。UBSがRBSとCDSを行なった場合、取引後にUBSが破綻するとこのCDSは早期解約となり、その時点で仮にRBSにとって時価がプラスでプラス分を担保物でカバーしきれない場合、カバーしきれない部分がRBSにとっての損失となる。CCPを導入すると、UBSとRBSが取引を行なった後で、“UBS対RBS”という取引が“UBS対CCP”“CCP対RBS”という2つの取引に分解される。CCPには資本金やリザーブが積まれ、かつ定期的に値洗いを行なって担保の出し入れを行うことで、全参加者にとってのカウンターパーティーリスクの軽減が期待できる。また、CCP内の取引情報に規制当局がアクセスを行なうことで、現在よりも効率的な規制が可能となるという期待もある。

 一方で、参加者の破綻後に早期に解約される取引のカバーを行なう必要性は現状のモデルにもCCPモデルにも存在することや、プレーンな取引以外をCCPで取り扱うことが容易ではないことなどはCCPの限界と考えられる。たとえば、AIGがプロテクションを売っている4410億ドルのスーパーシニアCDSなどは、とてもCCPで対応できるとは思えない。”完璧なCCP”を導入するのは先が長い話だが、一歩一歩進めていくということだろう。

 CDS市場にCCPを導入しようという議論は今に始まったことではない。2007年3月にはEurexがiTraxxインデックスの取引所取引を導入した(この時は参加者のサポートを得られずに不調に終わっている)。2008年5月にはThe Clearing Corporationという金融サービスプロバイダーがDTCCとの業務提携を発表し、DTCCのデータベースとリンクしてCCP業務を行なう意向を表明している。2008年7月には主要ディーラーなどがNY連銀に対して2008年12月までに北米のCDXインデックスにおいてCCPの利用をスタートすることを宣言している。現在は日本の取引所も含めて複数の取引所がOTCデリバティブ市場におけるCCP業務への参入意向を表明しているが、CDSに関してはDTCCとのリンクのあるThe Clearing Corporationのリードが大きいだろう。こういう話はローカルベースで行なうよりもグローバルベースで話を進めたほうが効率はよいだろう。

 新聞のそもそもの勘違いの一因は、 “Central Counterparty”のことを“清算機関”と訳していることにあるのかもしれない。“清算”の語感から、TARPや不良債権買取機構のように金融機関がポジションを清算するための制度と、とんでもない方向の誤解が生じる。ましてや、ここから飛躍して”損失を処理して公的資金を入れ、貸し渋りが解消されて金融市場が安定する”など、妄想としか思えない。

 細かい部分をいくつか拾うと、

・「清算機関は売り手と買い手の資金を仲立ちする組織」 
 --- 資金の仲立ちってどういう意味?この説明で専門家以外の読者が理解できる?(専門家でもわからないが)

・「清算機関ができると金融機関は時価がわかり損失額を見積もることができる」
 --- CDS市場参加者がCDSの価格をわからずに取引しているという理解?

・「取引条件などは取引や相手ごとにばらばら」
 --- いったい何年前の話?最近の取引条件の標準化についての認識はない?

どうでもいい瑣末なことではあるが、囲みでCDSという用語を説明しているにもかかわらず、なぜ”CDS”を”損失肩代わり商品”という”造語”に言い換えているのかも理解に苦しむ。まさか、書くことがなくて字数を稼ぐための工夫ということではないだろうが、言い換えることで読者が読みやすくなると考えているのだろうか?『損失先送り商品は一般にCDSと呼ばれる』って、”一般”という言葉の使い方を知っているとは到底思えない(こちらのブログを興味深く読ませていただきました)。

2008.10.25 | Comments(0) | Trackback(0) | CDS

Lehman破綻によるCDSの決済額

Lehmanを参照するCDSについて、AIGは支払額が$6.2million(=$0.0062billion)であると公表した。CEOがボーナスを返上すれば支払えそうな額だ。Bloomberg Newsによると、Hartfordが$30million、Genworthが$5.4millionだったと発表している。いずれも発表するほどの金額ではまったくないが、横並び意識で発表したのだろうか。

市場シェアの約9割を占めるDTCC(最大手保管振替機構のDTCの親会社)は決済額の総額が60億ドル程度と発表し、ISDAも(DTCCを含めた市場全体で)60億ドルから80億ドル程度との推計を発表している。メディアの為替市場コメントで、昨日ドルが買われた要因としてCDS決済のための資金手当ての動きが挙げられていたのを見て驚いた。確かにドル建ての取引においてはプロテクションの売り手はドルを支払うが、米系の参加者であれば為替でドルを調達することもない。実際の支払額は10月10日に決まっているわけで、さらに言えば9月中旬にLehmanが破綻した段階で元本の9割前後の支払いが起きることはわかっていたことで、為替市場を動かすほど大きな金額なのであれば、決済日まで為替のポジションをオープンにしておくのだろうか、私は為替の専門家ではないのでよくわからない。

いずれにせよ、Lehmanのクレジットリスクをロングしていた参加者は、社債保有者であれ、融資の貸し手であれ、CDSのプロテクションの売り手であれ、シンセティックCDOの投資家であれ、同じように損失を被る。一方、CDSなどでショートしていた参加者は利益をあげ、CDSでヘッジを行なっていた社債保有者や(米銀などの)融資の貸し手は損失を軽減することに成功している。損失の度合いは、どれだけLehmanのリスクを許容していたか各自のリスク管理能力に依存し、商品にかかわらず体力以上にLehmanのクレジットをロングしているファンドなどがあれば、当然大きなダメージを受けるだろう。シンセティックCDOの場合は、短い期間に多数のクレジットイベントが発生していることから、格下げや時価下落の影響に注意する必要があるだろう。

<追記>
昨日のDTCCの発表によると、DTCCにおいて参加者1対1ベース(bilateral)のネッティングを行い、決済銀行(CLS Bank)において複数の参加者ベース(multi-lateral)のネッティングを行い、実際に動いた資金は52億ドルであった。

2008.10.22 | Comments(2) | Trackback(0) | CDS

AIG FP

明日21日、Lehmanを参照するCDSのプロトコル対象取引の現金決済が行なわれる。ちなみに、60億ドル程度とされる現金決済とほぼ同額の57億ドルの現物決済(こちらは回収率相当(=約5億ドル)の現金と57億ドル額面の債券の交換-数字に勘違いがあり修正します)の方は今日20日までに行なわれることになっている。

ネットでショートポジション(プロテクションの買い)が多いとされるディーラーとは対照的に、プロテクションの売りに傾斜したAIGが21日の現金決済を前に資金繰りに苦しんでいるとの観測記事を目にしたが、改めてAIGFPの4410億ドル(2008年6月末時点)のSuper Senior CDSの中身を見てみた。(ちなみに、AIG本体はCDSでなく債券の形態でRMBS、CMBSやCDOなどにそれなりの金額の投資を行なっている)

大まかには4410億ドルの内訳は以下の通り

(1) Regulatory Capital Corporate: 1727億ドル
主に欧州金融機関の規制資本対策のCDOのSuper Senior (AAAのさらに上のトランシェ)。参照するのは欧州の企業。平均年限は1.3年(regulatory call)

(2) Regulatory Capital RMBS : 1326億ドル
主に欧州金融機関の規制資本対策のRMBSのSuper Senior (AAAのさらに上のトランシェ)。参照するのは欧州の住宅ローン。平均年限は2.0年(regulatory call)

(3) Corporate Arbitrage: 538億ドル
いわゆるシンセティックCDOのSuper Senior。参照するのはグローバルの民間企業・ソブリン銘柄。平均年限は4.4年

(4) Multi-Sector CDO: 803億ドル
High Grade ABS CDO (637億ドル)/Mezzanine ABS CDO (164億ドル)のSuper Senior。高格付け~メザニンのABSが主たる参照銘柄。残存年限5~6.2年


6月末時点の『累積損失率』と『加重平均劣後比率』は以下の通り

(1) Regulatory Capital Corporate: 累積損失=0.01%・劣後比率=23.2%
(2) Regulatory Capital RMBS: 累積損失=0.04%・劣後比率=13.41%
(3) Corporate Arbitrage: 累積損失=0.26%・劣後比率=18.94%
(4) Multi-Sector CDO: 累積損失=1.06%(HG)/6.63%(Mez)・劣後比率=15.67%(HG)/39.35% (Mez)

(1)と(2)のRegulatory Capital案件はそもそもの案件の性質がBIS対策であり、劣後比率や累積損失、残存年限を見る限り損失が元本におよぶリスクは小さいだろう。Super Seniorにまで損失が及ぶようなことになれば、オリジネーターの欧州の銀行自身も大変な事態に陥っている可能性すらある。

(4)のMulti-Sector CDOが諸悪の根源であり、6月末時点では平均ベースは余裕がある数字が並んでいるが、個別にはaccelerateされた案件などから一部元本に損失が及ぶケースもあったようだ。Mezzanineに比べてHigh Gradeが多いのが救いではあるが、将来的に大きな損失が発生するとしたらここであろう。CDSというリスクをとる道具が悪者扱いされているが、同じリスクを債券の形で持っても同じだけの損失が発生するわけであり、道具というよりはリスクの中身に問題があったということだろう。

Lehmanを参照するCDSが入っているとしたら(3)であるが、こちらも劣後比率が分厚いことからLehman一社の破綻によってAIGに現金の支払い義務は発生しない。WaMuやGSE、Icelandの銀行など、クレジットイベントの累積によって劣後部分の毀損は進んでいると思われるが、平均劣後比率を見る限りは、よほど悲惨な恐慌シナリオでも具体化しないと、元本毀損が将来発生するにしても、大きな損失にはならないのではないか。

以上はAIG自身のDisclosureのサマリーであり、今後も更新される数字を見守る必要があろうが、少なくとも上記の4410億ドルという数字の中からは、Lehmanを参照するCDSの現金決済において支払いを要求されることはないだろう。根本的な問題は、Multi-Sector CDOに含まれる米国住宅ローンの毀損の度合いと、時価評価の下落 and /or AIG自身の格下げによる追加担保差出し責務がさらに拡大することであり、それまでに資産の売却が間に合うかどうかということだ。

2008.10.20 | Comments(0) | Trackback(0) | CDS

大手金融機関の決算発表など

< Citigroup >
第3四半期はSecurities & Banking部門で証券化商品などの保有資産の44億ドルの評価損と、計90億ドル程度の融資ポートフォリオにおける貸倒損失と貸倒引当金の増加などによって、28億ドルの純損失となった。3ヶ月で11,000人の人員削減、12億ドルの経費削減、500億ドルの資産削減を行なっているが、まだまだデレバレッジは道半ばといった感じで先は長そうだ。

Securities & Banking部門での44億ドルの評価損には負債の時価評価による15億ドルの”かさ上げ”分が含まれる。負債の時価評価に使うCitigroup自身のCDSスプレッドは6月末の140bpsから9月末には285bpsまで拡大して、パラドックス的に決算を下支えしているが、現在は170bps程度まで戻していることからこの効果は相当程度消滅していると思われる。金額的に大きいのが傘下のSIVから引き取った資産の評価損(20億ドル)で、この大半は大手銀行のシニア債・劣後債のスプレッド拡大によるものということで(SIVの資産の半分は金融機関の社債が占める)、こちらは各国政府の資本注入によって現在は多少なりとも戻しが期待できるだろう。ABS CDOのSuper Seniorについては、6月から9月で279億ドル→257億ドル(ヘッジ後で181億ドル→163億ドル)とあまり減っていないが、High Grade ABS CDOの評価価格は41%-51%、Mezzanine ABS CDOは21%とのことで、ある程度は峠を越えた印象もある。

貸倒損失・引当金の増加傾向は顕著で、損失率は北米で1.01%→2.95%、中南米で2.51%→4.53%と、それぞれ急増している。

< Merrill Lynch >
第3四半期は、7月に行なったABS CDO Super Seniorのローンスターへの売却や対XLでのcommutation(契約の早期解消)による57億ドルの損失やその他のモーゲージ関連の損失等によって、51億ドルの純損失となった。

ABS CDOのSuper Seniorの残高は「64億ドルのロング+53億ドルのショート」というところまで減少しているが、ローンスターへの売却分はノンリコースのバックファイナンス付きであるため、一定額を超える損失は戻ってくることになる。53億ドルのショート(プロテクションの買い)の取引相手は10億ドル弱のMBIA以外はモノライン以外の高格付けのカウンターパーティーで担保契約があるということで、AIGではなく欧州の再保険会社あたりかもしれない。この他のモノライン向けのエクスポージャーは、原資産の価格下落を反映して36億ドル→45億ドルへと増加している。

住宅ローン関連以外でも、レバレッジドファイナンスが61億ドル、商業用不動産関連が128億ドルと決して小さくない残高である。負債の時価評価による“かさ上げ”分は28億ドルで、これもCitiと同様に現在では相当程度消滅している。また、36億ドルの損失を“モーゲージ関連”と“GSE関連”と“Lehman関連”の合計としているが、GSEについては優先株の保有によるもの、Lehmanに関してはOTCデリバティブ取引の早期終了に伴う取引の再構築時の損失やCDSでロングしていた部分の損失などとコメントしている。前日に決算発表を行なったJPモルガンのJames Dimon氏はLehmanの破綻について、インターバンク市場は”quickly and easily”に乗り切ったが、大きくはない問題がまだ残っているとコメントしている。

< UBS >
ついにスイス当局からの支援を受けることになった。60億スイスフランの転換社債をスイス政府向けに発行して資本を増強し、スイス中央銀行(SNB)からの540億ドルの融資を受けて600億ドル規模のファンドを設立、流動性の低い資産を移転することを発表している。SNBからの融資は期間8年(延長条件付)、L+250で、損失が60億ドルを超えた部分についてはSNBが負担することになっている。Bear Stearns救済の時のJPモルガンとFRBで設立したファンドと大枠は同じなのだろうか。

ファンドに移転する資産は、北米の証券化商品(サブプライム・Alt-A・プライム・CMBS・学生ローン等)や北米以外の証券化商品に加えて、不適切な販売によって買戻しを行なうこととなったARS(学生ローン裏付けなど、モノライン保証付きも含む)、モノラインとcommutationを行なった場合にその対象資産、などから構成される。

投資銀行部門のさらなる縮小(または身売り?)は避けられないが、レピュテーション問題で顧客離れが進んでいるWealth ManagementやAsset Managementをどれだけ立直すことができるかが存亡の鍵となるのだろうか。

2008.10.18 | Comments(0) | Trackback(0) | 決算発表

フローとストック

MarkitのホームページでQuarterly Metrics Reportが更新された。ISDAやBISの統計がデリバティブ取引の残高(ストック)を想定元本ベースで示しているのに対して、Markitのレポートは月間の取引件数(フロー)を表していることから、どれくらい市場取引が活発だったかを大まかに把握するのに役立つ。レポートの数字の出し方などは明示されていないが、主要ディーラーに対するヒアリングの結果と思われる。

これによると、CDSについては、2008年7月-9月の四半期では8月に取引量の落ち込みがあったものの、7月と9月の取引量は高水準で、9月は過去最高だった2007年7月と同様の水準である。特にiTraxxやCDXインデックスの値動きが大きかったことから、インデックス取引の件数が増加したのだろう。完全に想像だが、1件あたりの金額を減らして、こまめに取引が行なわれたという側面が一部あるのかもしれない。

2008年は2007年に比べて取引量の増加傾向が見られる。一方で、TriOptimaやCreditex、Markitといった金融サービスプロバイダーが、市場に存在する売り買いが両建てになってリスクが相殺されている取引を積極的に解約する作業(portfolio compression / tear-upと呼ばれる)を加速化させていることから、ストックベースでは、2007年12月の62兆ドルから2008年6月の54兆ドルと減少している(ISDAの統計)。

TriOptimaは2008年1月~8月に市場に存在するインデックス取引を22兆ドル解約した。Creditex / Markitもこの日の声明によると北米のTMT(Technology Media Telecommunication)銘柄を参照するシングルネームCDSの相殺・解約作業を行ない、参加した13金融機関の取引の半分以上を解約したとしている。

仕組み取引が激減し、Lehman、Merrill、Wachoviaと参加者が徐々に減り、カウンターパーティー・リスクの管理がより厳格化されることから、今後はフローも減少もしくは横ばいとなることが予想される。一方で、既存取引の相殺・解約作業は一層積極化し、予定通りに今年末までにインデックス取引においてCCP(クリアリング)が導入されるようになると、ストックの数字はさらに減少するのだろう。これで表面的な数字にこだわる外野の声もおさまり、ディーラーも淡々と取引を継続することになるだろうか。

2008.10.18 | Comments(0) | Trackback(0) | CDS

連休明け

とりあえず、G7の成果もあって欧州市場は堅調に推移している。銀行の過小資本の問題に直接取り組んだことや、国によってはある程度のタームファイナンスを助ける政策などなどなど、対症療法としてはそこそこの評価に値するような気がする。むしろ、金融機関の問題から実体経済への波及が加速するこれからが長く辛い日々となるのだろう。大先生が仰せの通り、デリバティブにだけこだわっていてもなんら前進しない。公的な支援でバランスシートに余裕が生まれた銀行は、果たしてどれだけ企業への与信を増やすのだろうか、、。

アメリカも今日は休みだが(取引所はオープン)、三菱UFJによるMorgan Stanleyへの出資も条件の修正を経て完了、ということで、こうしてひとつひとつ懸念が払拭されていくといいのだが。今週からいよいよ大手金融機関の決算発表がはじまるが、モーゲージ関係を見ても、レバローンを見ても、モノライン・AIGを見ても、その他もろもろを見ても、内容が悪いのは避けられそうにないが、ここ数週間のパニック的な下げの中で市場が意図せずにこのあたりを織り込んでいてくれているといいのだが。

2008.10.13 | Comments(0) | Trackback(0) | 市場雑感

悪い予感のかけらもないさ

昨日渋谷のライブハウスで仲井戸“Chabo”麗市氏のバースデーライブを鑑賞。58才になったChaboさんを祝うのは今年で60才の泉谷しげる&ロードオブライブと、“若手”の宮本(42才)率いるエレカシ。3者とも個性的かつ(実は)内向的な性格のベテランミュージシャンで、それぞれ緊張しながらお互いに最大限のRespectを払う温かい空間が渋谷に生まれた。

Chaboさんと泉谷の二人セッションに続いて最初に登場したのはエレカシで、これが気持ちの入った素晴らしい演奏だった。アマチュア時代にRCサクセションの曲をコピーしていたエレカシのメンバーは宮本を中心に明らかに普段とは違う雰囲気で、昔の憧れの人の前で演奏する喜びと緊張感が交錯しているのがよく伝わってきた。Chaboや泉谷のファンの前で演奏することにも戸惑いがあったのだろう(そりゃ、やりにくいだろうな、、、)。昔、麗蘭を始めたばかりの頃にChaboさんがSlidersのファンの前で演奏することに大いに戸惑っていたことを少し思い出した。

あんな宮本を見たのは初めてだったが、緊張する中で熱い思いを見事に曲にのせて熱唱する姿には心打たれた。ヒット曲、新曲の演奏に続いて、RCの“よそ者”をカバー。幸せそうにギターソロを弾く石君が印象的だった。石君はアマチュアのころ、この日も演奏した“チャンスは今夜”のコーラスを公園で練習したらしい。きっと、宮本に散々しごかれたことだろう。Chaboさんは返礼にエレカシの“冬の朝”を朗読と独自のアレンジで演奏した。“よそ者”と“冬の朝”と泉谷が唄ったChaboさんの“ホームタウン”を聴けただけでも十分だった。

マネーマーケットで資金が回らなくても、Liborが高止まりしても、UBSやMorgan Stanleyがつぶれかけようと、地球は回り続けるんだなといまさらのように実感して帰路についた。タイトルは、Chaboさんが唄ったRCの“スローバラード”のフレーズ。病床でブルースと闘っている清志郎にもきっと届いたことだろう。それにしても早く盗難にあったChaboさんのギターが見つかるといいのだが、、。

2008.10.13 | Comments(0) | Trackback(0) | ライブレポート

いつものあげ足取り(続)

Lehmanのプロトコルについて、今朝も記事に取り上げられていた。

『売りと買いの両方を取引しているため、、(中略)、、損失は全世界で総額で7000-8000億円との見方もある』

・昨日の夕刊では『40兆円の大部分が損失となる見通し』と報じていたが、半日で”損失”が急減している。”損失”の反対側で”利益”が発生していることにもさらっと触れており、細かい部分に目をつぶれば随分まとも内容になったと思う。

・タイムリーにDTCCが声明を発表し、Lehmanに関してDTCC内でプロテクションの売り手から買い手に支払われる金額は60億ドル程度としている。他のレポートでも目にしたが、ネットの元本はグロスの元本の100分の1程度というのが"rule of thumb"なのだろうか。DTCCはアメリカの保管振替機構のDTCを子会社に持ち、CDSについては取引確認書の照合やプレミアムのネッティング決済などのサービスを行なっているが、全世界でCDSの90%以上がDTCCを経由しているとされている。


また別のところで、米国の(元?)投資銀行の某社がLehmanを参照するCDSで大きなプロテクション売りのポジションを持ち、CDSのイベント決済の前に多額のキャッシュを用意する必要に迫られている、という話を耳にした。私はインサイダーでも某社の関係者でもないので真相はわからないが、感覚的にはありえそうもない話という気がする。普通、CDSを取引する際には参照企業とプロテクションの買い手の相関に注意する。だれも三菱UFJ証券から三菱東京UFJ銀行のプロテクションを買ったり、みずほ証券から日本国のプロテクションを買ったりしないだろう。同じように、Credit SuisseからUBSのプロテクションを買う、BNP ParibasからSoc Genのプロテクションを買うという取引は、回避されることが多い。もちろん、CSAという担保契約があるから、こうした相関の高い取引が不可能というわけではないが、Lehmanのプロテクションを別の北米の投資銀行から買うということも、大々的に行なわれていたとは考えにくい。

2008.10.12 | Comments(5) | Trackback(2) | CDS

いつものあげ足取り

Lehmanのプロトコルについての経済紙夕刊の記事に少しだけコメントを、、、

『清算価格、元本の8.6% 残高大部分損失の公算』
・残高の大部分が一部の参加者(プロテクションの売り手)にとって損失になるのは事実であるが、その反対側で同じだけ利益を上げている参加者(プロテクションの買い手)がいる。「残高大部分利益の公算」とは書かないまでも、もう少し中立的に書けないものか。

・プロテクションの買い手は、プロテクションの売り手が破綻等の理由でイベント決済に伴なう支払いを行なわないと、予定していた利益を確定することができないのは事実である。今回のタイミングに関していうと、プロトコル批准者にKaupthing Bankの名前が見える。Kaupthingが大きなシェアを持っているとは常識的には考えにくいが、KaupthingからLehmanのプロテクションを買っていた当事者がいるとすれば、この分だけを切り離して考えれば支払いを受けられない可能性は高い(実際は他のOTCデリバティブの時価をすべて相殺して考える)。ただし、CSAと呼ばれる担保契約によって”理論的には”すべてのデリバティブにおける債権が確保される。CSAではdailyやweeklyで値洗いを行なって担保の出し入れを行なうが、担保のとりっぱぐれがでた分だけが損失となる。


『市場推計ではLehman対象のCDSは約4000億ドルとされ、この大部分が損失となる見通し』
『単純計算では損失は数千億ドル規模にのぼる』
・”4000億ドル”の根拠は不明だが、感覚的にはそれほど違和感のある数字ではない。ただし、これはグロスの数字である。例えば、朝BNPがUBSから1億ドルプロテクションを買い、昼にUBSがBarclaysから1億ドルプロテクションを買い、夕方BarclaysがBNPから1億ドルプロテクションを買うと、統計にはグロスの元本残高として”3億ドル”と表示されるが、ネットの元本残高・市場に存在するリスク量はゼロである。

・『単純計算では』と但書きがあるところは一歩前進。『契約時の手数料やヘッジ取引で一部は相殺される可能性がある』がこれは「?」。インターバンクでは”手数料”という発想はないし、対顧客の取引でプロトコルに乗っかっているものがあるとしても、過去の決算期の収益と合わせて考えるのはちょっと無理があるか。

2008.10.11 | Comments(3) | Trackback(0) | CDS

Lehmanのクレジットイベント決済プロトコル

昨日のNY時間にLehmanの引渡可能債務の市場価格を決めるオークションが行なわれた。“プロトコル”について正しい認識が定着していないようなので、基本的なポイントをまとめておくと、

・標準的なCDSは現物決済型(『元本相当の現金』と『引渡可能債務』の交換)として契約されている。クレジットイベントが発生した場合、契約通りに現物決済を行なうのが大原則。

・希望者のみ、ISDAが用意する“プロトコル”に批准すると、批准者同士の取引が自動的に現金決済型(『100%から引渡可能債務の市場価格を引いたもの』を現金で決済)に修正される。

・“プロトコル”の適訳はなかなか見当たらないが、既存の取引の内容を修正する契約書のことで、これに批准した当事者間の取引が自動的にプロトコルの内容に沿って修正される。

・プロトコルに批准して現金決済を行なった上で、さらに希望があれば部分的・全面的に現物決済を行なうこともできる。

・プロトコルに批准するしないは完全に当事者の任意。一般的な傾向としては、主要なディーラーやCDSの取引の多い最終投資家・ファンドなどが批准している。シンセティックCDOなどの仕組み商品においては、一部の例外を除いてプロトコルは適用されない。

・プロトコルに批准して現金決済を行なう場合、引渡可能債務の市場価格は主要ディーラーによるオークション(入札)によって決められ、その価格がプロトコル批准者間の取引に一律に適用される。


というわけで、昨日のLehmanのオークションで決まった引渡可能債務の市場価格は『8.625』で、私の非科学的な予想の『9から11』を若干下回ったが、違和感のないレベルに落ち着いた。今回はOpen Interest が49.2億ドル(売り希望が買い希望を上回る)と前例のないほど大きな金額となったが、1300億ドルにも及ぶLimit Orderが入ってこれに対応している。

“オークションの結果、プロテクションの売り手にとって予定外の負担にならないとの見方から市場に買いが戻った”といった市況の分析も見られたが、数字が大きければ良くて小さければ悪い、という単純なものではない。仮に20%とか25%とか予想外に高い水準に決まった場合は、プロテクションの売り手にとっては“損が予定より少なくて済んだ”というポジティブ・サプライズであるが、一方ではプロテクションの買い手にとっては“得が予想外に小さかった”というネガティブ・サプライズとなっていた。

プロテクションの売り手がオークションの結果支払う現金の手当てに苦慮するのではないかとの憶測も聞かれたが、普通にリスク管理を行なっている市場参加者であれば、昨日100%のものが8.625%になったことで、資金繰りにあわてふためくことはありえない。資金手当てのためのファンドによる資産の換金売りを予想する声もあるが、オークションが終わってから資産を売りに走るというよりは、事前にある程度は手当てを済ませていると考えるのが自然だろう(例外的なケースはあるかもしれません)。

これでGSEとLehmanのオークションが終わったが、今後もWashington Mutual、アイスランド3銀行とオークションは続く。まだ、追加で増えないとも限らない。関係者の忙しい日々は続く、、。

2008.10.11 | Comments(0) | Trackback(0) | CDS

1日1行

10月6日、アイスランド議会は"Law no.125/2008"を可決し、アイスランドFSAに銀行の経営権を掌握するなどの権限を付与する。

10月7日、アイスランドFSAは国内第2位のLandsbankiに対してこの新法に基づいてReceivership Committeeを任命する。

10月8日、アイスランドFSAは国内第3位のGlitnirに対してこの新法に基づいてReceivership Committeeを任命する。

10月9日、アイスランドFSAは国内第1位のKaupthingに対してこの新法に基づいてReceivership Committeeを任命する。

以上、1週間に3件のクレジットイベントが認定される方向となってしまった。アイスランドFSAのアナウンスメントなどを見ると、アイスランド国内の預金・国内の金融業務の保全しか念頭にないように思われる。Kaupthingは日本でも確か700億円程度のサムライ債を発行しているが、債券保有者の立場は極めて弱いものとなり、OTCデリバティブも早期終了となる気配である。国際資本市場への”配慮”はまるで感じられないが、それほど状況が深刻であることの裏返しとも言えようか。

ここ最近、クレジットイベントが発生する都度、原契約の現物決済を現金決済に修正する”イベント決済プロトコル”が用意されているが、明日はLehman、再来週はWashington Mutual、おそらく来月にアイスランド3行のオークションと前例のないほど過密なスケジュールである。日本でも昨日は新井組・今日は公募のREITが破綻しているが、北米→欧州ときて、アジア・日本に飛び火しないといいのだが、、、。

2008.10.09 | Comments(0) | Trackback(0) | CDS

GSEのクレジットイベント決済プロトコル

昨日NY時間に入札が行なわれて、プロトコルに批准した当事者間に適用される現金決済価格が決定された。取引量や引渡可能債務が多く、またクレジットイベントとはいっても破綻はしていないことから引渡可能債務によってそれなりの価格差が存在するなど、色々な意味で前例のない入札であったが、幸いにして大きな問題なしに行なわれたようだ。決定した価格は以下の通り。

Fannie Mae senior 91.51
Fannie Mae sub 99.9
Freddie Mac senior 94
Freddie Mac sub 98

シニアの回収率については、大手金融機関のレポートなどで90を下回るとの予測もあったが、そこまでは悪くなく、劣後の回収率は思いのほか高く決定されている。入札の過程をみると、シニアも劣後も入札に参加したディーラーが当初提示した価格水準はほぼ同じであったが、劣後のOpen Interest(建玉)が大きく”買い”に偏り、結果的に需給を反映して劣後の最終価格がシニアの最終価格を上回る格好となっている。

イベント決済の入札においては、他のディーラーの価格から乖離した価格を提示したディーラーはペナルティーを支払うメカニズムが存在するが、今回はディーラー間で当初の価格提示にばらつきが見られ、比較的大きなペナルティーを支払ったディーラーが存在していた。

日本の大手経済新聞は相変わらずで、「清算価格、元本割れ(←イベント決済なんだから当たり前だろ!)」との見出しから始まり、残高が5000億ドルだから1%元本を下回ると50億ドルの損失が発生と、グロスとネットの違いを理解していない分析(?)をもとに「金融機関、多額の損失確実に」と報じている。もう少しきちんと取材をしてから記事にすればいいと思うのだが、、、。

2008.10.07 | Comments(0) | Trackback(0) | CDS

溶けゆく氷の島 (追記あり)

アイスランドが日々市場に追い込まれてゆく。この日は一時的にクローナを固定し、ロシアから40億ユーロの融資受入れの合意を発表した。さらには同国のFSAはデフォルトを起こす可能性があるとして民間銀行第2位のLandsbankiを公的管理下においてreceivership committeeを任命すると発表した。これでLandsbankiを参照するCDSでクレジットイベントがトリガーされる可能性が否定できないが、仮にイベントになったとしてもGSEのように回収率が高くなることを祈るばかりだ。プレスリリースには、今回の措置はアイスランド国内の銀行システムを守るためのもので、国内の預金はすべて保護されるとされるが、預金以外の債務の取扱いが注目される。

問題はこれで終わりではなく、3大銀行の残りの2つであるKaupthing BankとGlitnirも引き続き不安定な状況が続く。Kaupthingは日本でもサムライ債を発行しており、Lehmanほど金額は大きくないが、先行きに不透明感が漂う。思えば、Moody'sが複合デフォルト分析(JDA)なるコンセプトを導入して、銀行単独の信用力に国から期待されるサポートを加味してKaupthingの格付けをAaaに格上げしたのは去年の2月のことである。結果論といえばそれまでだが、最近の事例を見ていると、預金は確かに国のサポートが入るケースがほとんどであるが、シニア債務はケースバイケースとなっている。JDAの導入に批判を受けたMoody'sは昨年4月にはKaupthingをAaaからAa3へ引き下げ、今年2月にはA1まで格下げしているが、ここ2年間の格付けアクションはまったく意味のないものであったとしか思えない。

(追記)水曜日にはGlitnirもLandsbankiと同じreceivershipになってしまった。ISDAのHome Pageを見ると、どちらもクレジットイベント決済プロトコルが準備されようとしている。欧州銘柄初のプロトコルという意味で”アカデミック”には注目されるが、実務的にはこれほどクレジットイベントが立て続けに発生するとたまったものではない、、、。

2008.10.07 | Comments(0) | Trackback(0) | CDS

ハイテク社会

銀行間で資金をやり取りするマネーマーケットが機能不全となって、欧州の金融市場は引き続きパニック状態にある。今日、テレフォンバンキングやネットバンキングの普及が現在の混乱を生み出す一因になっているかもしれないという趣旨のレポートを目にした。いわく、昔であれば街角の銀行の店舗を見ていれば取り付け騒動が容易に確認できたが、現代では多くの預金者がネットや電話で”静かに”預金を引き落とすため、どの銀行の預金が減っているかがよく見えずに、マネーマーケットで疑心暗鬼を生む要因となっている、というものである。関連性は低いが、携帯電話の普及によって、いわゆる”振り込め詐欺”が広がりを見せているのではないかという話を聞いたこともある。

どちらの分析もどの程度当たっているのか定かではないが、少なくとも「インターネットや携帯電話という最先端の技術の普及が金融・社会問題を引き起こした。どちらも厳しく規制すべきだ」という議論にはならずに、根本的な原因である銀行の資本不足や詐欺行為の増加にどう対応すべきかに注目が集まっているように思う。

一方で、CDSに対する一部当局やマスコミの反応は、CDSという信用リスク移転の道具そのものをリスクをばらまくけしからんものと批判し、本来融資を行なうべきではないサブプライム層への住宅ローンの貸出しの増加や、無担保のCDSの残高を増やしたりカウンターパーティーの分散が不十分であるというユーザーのリスク管理の不備という”本質的な問題”を素通りしている感がある。メディアや政治家のデリバティブに対する拒否反応は今に始まったことではないのだが、、、。

ネットバンキングの普及、あるいはもっと広くインターネットの普及、と今回の金融危機の関連性については、少し掘り下げて考えてみる価値があるような気もする。

2008.10.06 | Comments(0) | Trackback(0) | CDS

週末の懸念事項をいくつか

<Execution risk?>
Depfaを傘下に持つHypo Real Estateに対して、ECB・Bundesbank・民間の銀行団で350億ユーロの信用枠を設定する案が先週にEUによって承認されていたが、週末になって民間の銀行団がこの案を撤回してしまった。民間の銀行団は「現在代替案を検討中」としているが、”救済案・国有化案の実行リスク(execution risk)”を意識せざるを得ない出来事になってしまった。Hypo Real Estate側は、同社が非常に厳しい状況にあることを認識して欲しいと、半ば脅しともとれるようなコメントを出しているが、果たして速やかに実効性のある代替案がでてくるのだろうか。

CitigroupによるWachoviaの買収も、金曜日にWells Fargoの横槍りが入り、新聞報道では公的資金なしのパッケージを提案したWells Fargoが優位とされていたが、NY地裁はCitigroupに独占交渉権を与えたようだ。Wells Fargoの案はWachoviaの資産についてのTaxメリットを最大に活用していることから、公的資金を使わないといっても税収が減るという意味で実質的には大きな差はないのかもしれない。いずれにしても、話が長引いて"execution"が滞ると、市場センチメントにとって悪材料でしかないように思う。

<その他欧州金融機関>
オランダ政府がFortis Bank NVと保険部門を100%取得したとのこと。預金者や債券保有者にはポジティブと思われるが、CDSはどうなるだろうか。政府の100%保有ということで、テクニカルにクレジットイベントに該当するリスクが少しだけ気になる。

ギリシャがアイルランドに続いて国内金融機関の債務保証を宣言した。EU内ではアイルランド政府の措置に反発する声もあり、週末の欧州首脳会談でも一部足並みがそろわない部分が露呈されるなど、欧州金融機関の受難はまだ続きそうな気配だ。

<モノラインの現状>
・FSA・Assured
--- Moody'sは格付け見直しの結果を9月上旬に発表すると言っていたが、さすがにそろそろ何らかのアクションがあってもおかしくない。FSAの力強い”スポンサー”だった親会社のDexiaが資金繰り難に巻き込まれたことは、FSAにとっては大きなマイナス材料だ。FSAとAssuredが現在のAaaから格下げされると、同社に再保険でリスクを移転していた他のモノラインにとっての再保険によるリスク削減効果が減り、また、パブリックファイナンス案件やSuper Seniorのヘッジを行なっていた大手金融機関もカウンターパーティーリスクについて引当てを増やすことも予想される。

・Ambac・MBIA
---こちらもMoody'sは現在のダブルA(Ambac)とシングルA(MBIA)から複数ノッチ格下げする可能性を示唆し、その結論はいつでても不思議はない状況である。格下げは、上述のように他のモノラインや大手金融機関に影響をもたらす。もちろん、ラップつきの証券化商品や地方債などのパブリックファイナンスにも影響は及ぶことになり、先般ARSの買戻しを発表したUBSなどの大手金融機関にとってはこちらでもネガティブな影響を受ける。さらには、格下げによってGICにおける早期償還や追加担保提供の義務が発生して、同社の流動性にもさらにプレッシャーがかることにもなる。

・FGIC・Syncora・CIFG
---Commutationや地方債ポートフォリオの再保険など、大幅なリストラは進行中であるが、保証する住宅ローン関連の証券化商品の劣化のスピードが速く、引き続き綱渡り状態と思われる。Commutationを行なっても、格付会社は格上げには慎重な姿勢を崩さない。


きりがないので、この辺で、、。

2008.10.05 | Comments(0) | Trackback(0) | モノライン

I just call to say I love you

1週間遅れで読んだIFRに洒落のきいたフレーズを見つけた。先週RBSが10月27日にcall(発行体の権利による早期償還)を迎えるUT2劣後債(LT2(期限付き)よりも支払優先順位が低い)をcallする意向を表明し、投資家はホッとしているだろうという記事で、RBSは本来はcallしたくないのに投資家に嫌われないためだけにcallすることをStevie Wonderの名曲にかけている。

洒落はいいのだが、状況は深刻だ。LT2やUT2は(多くは)5年後のcall日には早期償還する”暗黙の了解”で発行され、5年後にcallされなかった場合のクーポンは大きくステップアップする。昨年の夏以前には当初5年がL+20、5年目以降はcallされなければL+70といったような大手金融機関のLT2が目立ったが、その当時はL+70も払ってまで早期償還しないことは想定外と思われた。

サブプライム危機発生によって大手銀行の資金調達コストが急激に上昇し、新しくLT2を発行するにはL+70を大きく超えたスプレッドが必要になっても、「投資家は5年目に早期償還される前提で投資している以上、発行体である銀行は目先の経済合理性だけの判断でcallをかけないと劣後債市場から締出しをくらい、資本増強のための有力な手段を1つ失う」といった考え方が一般的で、実際には一部の例外(イタリアの小さな銀行)を除いてcallがかからなかった事例は見られなかった。

以降、状況はさらに悪化し、資金調達コストがさらに上昇するばかりか、そもそもマネーマーケットで資金を調達することすら困難になってしまった。ここまでくると、「非常に遺憾だがパラダイムが変わってしまった。残念ながらcallをかけません。」という銀行が出てきても不思議ではないと考える投資家がいても不思議はない。昨年来、いったいいくつの”暗黙の了解”が裏切られてきただろうか。現時点では、LT2やUT2が一斉にcallがかかり始める可能性が高いとは思わないが、どこか大手金融機関が"callをかけない前例"を作ると、他も追従することになるのだろう。

Callがかかる前提で劣後債を購入している投資家にとって、callがかからないことは保有資産のデュレーション・リスク量の増加を意味する。この結果、今よりも金融機関に対するエクスポージャーが増えることになり、新規の金融債の投資が限定的となる可能性が考えられる。また、ヘッジで使っていた金利・通貨スワップやCDSも、call日に満期を合わせて取引することが多いことから、新たに金利リスク・為替リスク・信用リスクのヘッジを行なう必要性が生じることもあるだろう。

今回の金融危機が終わったら、”裏切られた暗黙の了解”というテーマで本が書けそうだ(気が早い?)。

2008.10.05 | Comments(0) | Trackback(0) | 市場雑感

GE

それにしても、GEのスプレッド拡大が止まらない。昨日5年CDSは前日より100bpsほど拡大して600bpあたりだったが、今日も600/630→650/750ときて730bpsでトレードされたようだ。社債も残存1年未満のものでオファーはL+700といった水準だ。何が起きているのかよくわからないが、数字だけ見ていると不気味な動きだ、、、。

2008.10.01 | Comments(3) | Trackback(0) | 市場雑感

TARPとM-LEC

昨日、Moody’sとS&PはこのBlogでも何回か取り上げた“最後のSIV” Sigma Financeのシニア債格付けをそれぞれA3→Ca、A→CCC-へと、もう後戻りが困難と思われる水準まで格下げした。CP/MTN市場での資金調達の道が絶たれたSigmaは保有資産を利用してのレポ取引でファンディングをつないでいたが、先般流動性テストにフェイルし、昨日はレポのカウンターパーティーからデフォルト通知を交付されたようだ。S&Pによると、このデフォルト通知が解消されない場合、クロスデフォルトを起こして他のカウンターパーティーとのレポ取引もデフォルトとなるとのことである。

Moody’sによると、Sigmaの資産は約270億ドルで、このうち約250億ドルをレポに出して約170億ドルの資金をファンディングしている。仮に約250億ドルの資産すべてをレポ・カウンターパーティーに押さえられたら、約60億ドルのシニア債の返済原資は残りの約20億ドルの資産だけという状況になる。昨年来の前例のないほど厳しい市場環境の中でSigmaがここまで存続できたことは驚きであるが、大手金融機関でもまともなレートでファンディングができない現状を考えると、状況は非常に厳しいと言わざるを得ないだろう。(追記:結局 receiverを任命することになってしまった、、。)

このまま清算されることになると270億ドルの資産の行方が気にかかるが、250億ドルをレポのカウンターパーティーである大手金融機関がある程度分散して保有しているのであれば、短い期間に機械的に投売りが行なわれるというシナリオは避けられそうな気もする。むしろ、Sigmaのシニア債を“risk free”の担保資産として用いているシンセティックCDOなどのクレジット仕組み債において、現在の時価で早期に償還が行なわれることになった場合の影響が気にかかる。

最近話題にのぼることが少なくなったSIVだが、SIVのビジネスモデル(ファンディングミスマッチ・レバレッジetc)が銀行のそれと本質的には同じであるせいか、昨年来のSIVを取り巻く状況を思い出してみると、現在の金融市場の状況とよく似ていることに気が付かされる。SIVは昨年夏に短期金融市場でのファンディングができなくなり、キャピタルの増強もままならず、資産を売却してレバレッジを下げようとしても資産価値の下落や市場流動性の低下が障害となり、格下げやキャピタルの価値の低下が進む中でスポンサー銀行が何らかの方法でシニア債務だけは守る、といった事例がよく見られた。SIVの資産売却を助けるために、政府が後押ししてM-LECという資産買取りファンドを設立するプランも思い出される。M-LECは結局企画倒れで実現しなかったが、果たして今注目のTARPは無事に離陸することができるのだろうか?

2008.10.01 | Comments(0) | Trackback(0) | SIV

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