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I just did not call to say I am in trouble

クリスマスもすぐそこまで来ているが、Detroit Three、FOMC、Madoffファンドなど、先週も引き続き大きなニュースには事欠かない週であった。今週・来週も、クリスマス・年末ムードとは程遠い展開になりそうだ。

先週は、大手金融機関等に対する格付けアクションが相次いだ。Moody’sは決算発表を行なったGoldman SachsとMorgan StanleyをそれぞれAa3→A1、A1→A2、CitigroupをAa3→A2へと格下げした。S&Pは金曜日に大手金融機関12社を一斉に格下げしているが、週の半ばにはGEとGECCのトリプルAを見通しネガティブとし、2009年の収益性によっては格下げを行う可能性を示唆した。

トリプルAと言えば、CDPC(クレジット・デリバティブ専門会社)の老舗であるAthilonに対して、Moody’sはAaaからBaa1まで一気に格下げしている。ここ数年でトリプルAを失った代表的なものを挙げてみると、RMBS、ABS CDO、シンセティックCDO、CPDO、SIV、CDPC、モノラインといった証券化に関連したものから、AIG、UBS、Kaupthing(!)といった金融機関まで、多岐にわたる。ToyotaがFitchから格下げされ、GE・GECCにネガティブウォッチがついた今、安定的なトリプルAと言えば、米国政府くらいなものだろうか(皮肉が過ぎる?)。

S&PがMorgan StanleyをAとしたことで三菱東京フィナンシャルグループと並び、ようやく「破綻の危機を救った側」の格付けが「救われた側」よりも低いという逆転現象が解消された。

(竜王戦第7局以外で)個人的にトップニュースと感じているのは、Deutsche Bankが発行体に早期償還する権利のある(=コーラブル)期限付劣後債をコールしない(早期償還しない)と発表したことだ。長年にわたって、コーラブルの期限付劣後債・永久劣後債は経済合理性にかかわらずに発行体がコールをかけるものという暗黙の了解が存在してきた。10月のI just call to say I love youというエントリーでも書いたように、金融危機が深刻化して銀行の資金調達が困難となる中で、暗黙の了解が破られる可能性は水面下では上昇していたのだが、いざDeutsche Bankのような最大手がコールをしませんと宣言すると、改めて影響の大きさを実感する。投資家団体はDeutsche Bankに抗議を申し入れるとともに、他の大手銀行には追従しないようにと要望を出し、また、一部の投資家はDeutsche Bankの社債をすべて投資対象からはずして抗議の意を示しているようだ。

基本を簡単におさらいすると、BIS規制を受ける銀行が自己資本比率を高めるためには、「資産を減らす」ことと「資本を増やす」という選択肢がある。「資本を増やす」ためには、株式を発行するのがオーソドックスではあるが、この他にも劣後債にも資本性があるということで、(詳細は省くが)一定の制約の元に自己資本としてカウントすることが認められている。Lower Tier II(LT2)とよばれる期限付劣後債については、残存期間が5年以上あるものは元本全額が自己資本として認められ、4年以上は元本の80%、3年以上は60%、というように残存期間が5年を切ると自己資本としてカウントできる金額が減少する。

一方で、投資家のニーズは5年程度以下の年限にあることが多く、期間が長い劣後債を発行しても販売できる金額には限りがある。この“ギャップ”を埋めるために作られたのが俗に“10NC5(ten non call five)”とよばれる「年限は10年だが5年目以降に発行体に早期償還する権利が付与されている」タイプの債券である。クーポンは、たとえば当初5年目まではL+20で、後半5年はL+80と大幅にステップアップするものが多い。これによって、発行体は(残存期間が5年以上である)当初の5年間はBIS規制上の恩恵を100%享受することが可能となり、投資家も5年目からクーポンが跳ね上がることなどからほぼ確実に5年目にコールがかかって終了する債券、という認識で投資を行っていた。実際に、セカンダリー市場では5年目のコール日を満期として価格が計算されていたし、CDSでヘッジする場合でも5年目のコール日に合わせることが一般的であった。

発行体からすると、5年目にコールをかけないと利払い負担が増加し、自己資本としてカウントできる金額も減ることから、「コールをかけて新たに10NC5を発行する」ことが経済的に合理性のある当然の選択肢だった。それ以上に、投資家は5年目にコールがかかるものとして投資を行っている以上、コールをかけてしまうと投資家の期待を大きく裏切ることになり、以降同様の劣後債の発行市場から締め出しをくらってしまうリスクを抱えることになる。

Deutsche Bankの場合、金融危機によって新たに期限付劣後債を発行するとおそらくL+200とか300といった発行コストになることが見込まれる一方で、今回の債券(10億ユーロ)はコールをかけないことでクーポンはL+88にしかステップアップせず、経済合理性からすると今回の判断は至極当たり前のことではある。Deutscheはまだではあるが、公的資金が入った銀行などは、国から借りた資金で既存の社債を早期に償還することには各方面から待ったがかかる可能性もある。それでも、コールをかけるという暗黙の了解を破った代償は、資本市場の投資家とのリレーションという、将来を考えると決して小さくはないものである。

今回の発表によって他の銀行も追従することも大いに予想され、社債もCDSも銀行の劣後クレジットのスプレッドは拡大した。すでにある程度は織り込まれていたリスクであるが、スプレッドが拡大したということは、完全には織り込まれていなかったのだろう。今回の発表を予想していなかった社債保有者にとっては、残存1ヶ月債としてリスクもキャッシュフローも見ていた債券が残存5年1ヶ月債に変わってしまった。これが理由でキャッシュショートとなって連鎖破綻が起きるようなことはないだろうが、価格面からも資金繰り面からも対応を迫られることになった投資家は相当気分を害しているだろう。

証券化商品・コーラブル劣後債という自己資本対策には欠かせなかった道具が、少なくとも短期的には使いにくいものとなってしまった。CDSにも実務を無視するような過度な規制がかかるようになると、なおのこと銀行にとっては逆風である。今でこそ政府のサポートによってなんとか生き延びているが、将来的には、こうした道具の使い勝手が悪くなると、その分資産を売却したり、新規の融資を絞ったりすることが容易に想像される。バーゼル規制も含めて、銀行の資本構造の周辺については根本的に見直しを行なう必要性が高いだろう。





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2008.12.21 | Comments(1) | Trackback(0) | 市場雑感

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