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George Soros

ヘッジファンド業界全体は金融危機のあおりを受けて苦しい状況にあり、”shadow banking system”とのレッテルを貼られてより厳しい規制の網がかかりそうな展開になっている。来週のG20でもヘッジファンド規制は1つの大きなテーマとなるようだ。

George Soros氏はいわずとしれたヘッジファンド界の重鎮で、1990年代のポンド相場の大幅下落など、数多くの輝かしい(?)戦績を残し、私にとっても憧れの人物である。そんなSoros氏にとってもここ最近は厳しい状況だったと思われる。金曜日には株価操作によってハンガリー当局から罰金を課され、謝罪を行なっている。

Soros氏は昨年11月に行なわれた公聴会において、クレジット・デリバティブこそが市場混乱の原因で、より厳しい規制を受けるべきであると主張したが、スケープゴートを見つけてヘッジファンドに対する風当たりを避けようとしているのではないかとも一部では評されていた。つい先日もWall Street JournalにCDS悪玉論を寄稿しているが、タイミングから言って、これも来週のG20でのヘッジファンドへの風当たりを少しでも弱めようという政治的な動きと解釈することもできるかもしれない。

残念ながら、Wall Street Journalに寄稿した内容は、あまり読む価値がない。Soros氏ほどの人物でも、デリバティブに対する理解がこの程度なのかと、少しがっかりした。

AIGが破綻寸前となったのは、CDSでポジションを適切にカバー・相殺しなかったからだ、と断定しているが、短期的な売り買いを繰り返すディーラーなどと違って、そもそもAIGのような最終投資家は投資したポジションは最後まで持ちきることが多い。問題だったのは、投資した中身(ABS CDO)と、担保なしで取引に応じていた取引相手側のリスク管理である。

AIG破綻の教訓として、CDSはtoxicな商品であり、裏づけとなる現物資産を保有する当事者だけが取引すべきである、としているが、AIGが行なっていた取引のほぼすべては現物資産を保有する当事者が取引相手であった。ここ数年、あれだけ詳細に開示を行なっているのに、Soros氏に限らないが、見ている人間は非常に少ないように思う。マスコミも、「情報開示・情報開示」と念仏を唱える前に、現在開示されている情報に目を配るべきである。

CDSを投機的に使うことによって、企業を破綻に追い込むことが可能であり、株の空売りとCDSのショートで  Bear StearnsもLehmanもAIGも破壊されたことは明らかであるとしているが、政治家や大学の先生が言うならまだしも、ポンドを売り浴びせてイギリス国家を追い詰めたSoros氏の発言としては首を傾げてしまう。CDSでショートをとるとアップサイドが無限にあり、投機家にとっては使い勝手がよいといった指摘も、プレミアムのネガティブキャリーの効果を実感したことがない人間の発言のように思えてしまう(CDSでショートするって、当然コストがかかるわけだ)。

さらに、CDSは現物の裏付けなしに無限にショートするが可能で危険なものであるが、AIGはこのことを理解していなかった、としているが、AIGはトレーディングをやったり、リスクショートをしていたわけではなく、最終投資家として満期保有ベースの取引を行なっていたわけである。

まとめとして、大投機家のSoros氏は、国際的な規制当局の協調などによって、CDSは現物を保有する当事者同士の取引に限定し、国家や企業の信用力を投機の対象にすることを禁止すべきだとしている。この結果、CDSのスプレッドはタイトニングして、AIGに対して当局が行なっている支援の金額も減るだろう、としているが、仮に実現したとしても、CDS市場とは直接はリンクしていない住宅ローンが裏付けのRMBSや、バランスシート型CLOのスーパーシニアの価格がどれだけ反応するのだろうか、、。






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2009.03.28 | Comments(2) | Trackback(0) | CDS

PPIP考

 Public-Private Investment Programについて第一印象を思いつくままにいくつか。

 結論から言うと、発表を受けてなぜ株がこんなにラリーしたのかわからない。何も発表されないリスクまで織り込んでいたということか。少なくともクレジット市場の反応はもっと冷ややかであった。

 一言で言えば、「証券化商品のエクイティを買いませんか?国がレバレッジをかけるのを手伝います。」ということで、国は民間にレバレッジ投資を推進している。住宅ローン(等)を対象とするLegacy Loan Programの方は「証券化商品のエクイティ」、RMBSやCMBS(等)を対象とするLegacy Securities Programの方は「再証券化商品のエクイティ」という位置付けだ。私自身は、「レバレッジ」も「証券化商品」も「再証券化商品」もそれ自体は“悪”であるとは考えていないから、このスキーム自体になんら問題があるとは思わないが、あれだけ「レバレッジ」や「再証券化」を批判してきた新聞が「投資家は政府支援を利用して出資額の14倍のローンを買える」と無邪気に書いているのは、レバレッジの意味をわかっていないのかもしれない。

 住宅ローンや関連する証券化商品は現在セカンダリー市場の流動性が極端に低下し、流動性プレミアム(ディスカウントの方が正しいか)の存在によって売却しようとすると極端に低い価格でしか売れないという状況にある。このスキームの導入によって、(1)銀行は流動性プレミアムを除外した妥当な価格で売却することが可能となり、その結果銀行の新規貸出し余力が高まり、(2)さらには価格が見えないものの価格が透明になることで、市場のconfidenceが高まることが期待される、と説明されている。

 (1)については、たとえば理論価格は50%くらいとのコンセンサスがある資産が市場では流動性プレミアムの影響で30%くらいでしか売れない状況において、PPIPによって銀行は45%くらいで売却可能となるかもしれない、といったことがイメージされているのだろうが、実際にはこのようなケースがどれだけあるかは不明だ。民間にキャッシュがないから理論価格が50%のものが買えないというよりも、現在は50%だが今後どこまで下落するかわからないから30%くらいでしか買えない、といったケースも多いだろう。そもそも、価格にコンセンサスがある資産を銀行が売却するインセンティブがあるかも不明だ。銀行としては、今後価格の下落が見込まれる資産から順番に売却したいと考える。投資家はその逆を考えるわけだから、折り合いをつけるのは思ったよりも容易ではないように思う。

(2)については、価格が現在見えていないものの価格が見えてしまった場合、現実が暴露されて逆効果となることもありうるのではないだろうか。逆説的だが、透明性がいつもいいとは限らない。うがった見方をすれば、レバレッジを利用しているのは、少額の民間の投資資金で多額の資産の買取りを可能とする目的に加えて、買取り価格が100%透明になるのを避けようとしているのかもしれない。少なくとも、保有する類似資産の時価評価に対する影響は避けられないだろうから、銀行もどの資産をいくらで損切るか、慎重にならざるをえないだろう。

対象資産については、当初は不動産関連のローンか証券化商品ということだが、こちらはすでに相当部分価格の下落は会計上反映されているのではないだろうか。むしろ、銀行のバランスシートでこれから損失の拡大が見込まれるのは企業向けの融資であり、こちらはCDSや証券化商品とは違って時価評価の対象とならないことから、引当て不足によって今後も銀行の決算の足かせとなるだろう。なんとなく、対策が周回遅れのような気がしてならない。

思いつくままに、憎まれ口を並べてきたが、当然のように政府当局は実態をはるかによくわかっているわけだから、それなりに効果があると踏んで導入するのだろう。いずれにしても、銀行・投資家・当局3者の間で落としどころを見つける作業がスムーズにいくとは考えにくく、時間がかかる話にはなろう。1件も実現しないと市場に大きな失望をもたらしかねないことから、Citigroupのような実質国有化銀行を使って実現にこぎつけることも予想される。単なるポーズに終わるのか、実質的な意味を持つ特効薬になるのか、評価はまだ難しい。

2009.03.25 | Comments(3) | Trackback(0) | 市場雑感

CDS取引残高

DTCCのデータから(DTCCについてはこちらの説明がコンパクトにまとまっている)

3月13日付けのグロスの想定元本残高は25.2兆ドルとなっている。DTCCがデータの公表を始めた2008年10月31日が33.5兆ドル、2008年末が29.1兆ドル、2009年2月末が28兆ドルということで、着実に減少している。既存取引の満期プロファイルや新規取引の金額を見ると、新規取引が自然体で満期を迎える取引よりも相当程度大きいことから、想定元本残高が減少しているのはTriOptimaなどがプロテクションの売りと買いが相殺された関係にある市場取引を相殺・解約しているからということになる。特に3月に入ってからの相殺作業のペースは速く、DTCCの数字では2.7兆ドルの取引が早期に解約されていることになる。

2008年12月時点のグローバルベースのグロスの想定元本残高の数字については、例年だとISDAは4月に、BISは5月に発表することになっているが、この分だと2008年6月時点の数字から大幅に減少していることが予想される。これは、市場取引量が激減しているからではなく(ここ最近は結構減少しているが)、重複する取引の相殺作業が進んでいるからということになる。4月からは北米市場を皮切りにCDSの商品性がさらにコモディティ化され、相殺作業がより容易になることや、クリアリングの動きが活発になると、この傾向はさらに進むものと考えられる。

以上はグローバル市場の話であるが、日本市場については、日本銀行の統計によると、2008年12月は3,555億ドルと、2008年6月の5,442億ドルから大きく減少している。こちらの数字には、外資系金融機関同士が行なう日本銘柄を参照する取引が含まれておらず、また、主要なディーラーである日本の証券会社数社の数字も入っていないことから、感覚と合いにくい部分もあるのだが、今年に入ってからの日本のCDS市場の取引件数の減少はさびしい限りである。もっとも、CDSに限らず、社債や他の金融商品の大半も、ディーラーのリスク許容度の極端な低下によって低迷しているわけなのだが、、。

2009.03.22 | Comments(0) | Trackback(0) | CDS

週末の雑感

<AIG関連>
・あまりポピュリスト的にはなりたくないが、それにしても(1年前に決定されていたにせよ)金額の大きさや空気の読めなさには愕然とさせられる。現在の市場環境で、億円単位の金額を払わないと他社に転籍してしまうような人間はどれだけいるのかだろうか。(おそらく)一般的な給与体系であろうAIGの保険部門の社員やAIGFPでもフロント以外の社員にとっては、現在の”AIGバッシング”にはやりきれない思いがあるだろう。

・Goldmanが各方面の批判に応じる形でAIG向けのエクスポージャーの詳細を開示した。2008年9月にAIGの救済が行なわれた時点では、AIG向けのエクスポージャーは100億ドルで、このうち担保とAIGを参照するCDSのプロテクションだけで75億ドルがカバーされていたとのこと。この時点でAIGが法的に破綻していれば、ネット後では逆に収益が上がっていたかもしれないと、かなり強気なコメントを出している。現時点でのエクスポージャーは60億ドルで、うち44億ドルが現金を中心とした担保でカバーされている。こちらのエクスポージャーはシンセティックCDOのスーパーシニアということで、大きな問題にはならなさそうだ。額面通りに受け取っていいかは定かではないが、"Government Sachs"と揶揄されるように、Goldmanと政府当局との関係にはいつもきな臭さが感じられる。

・少し前に、「国民の税金がAIGのカウンターパーティーへの返済に使われた」という報道があった。取引相手への支払いを行なうために支援を行なったわけであり、今さら驚くようなニュースではないように思うのだが、中身を見ると、CDS取引における現金担保の拠出、ABSCDO取引の解約フィーの支払い、securities lendingの取引相手への債務履行ということ。CDSの現金担保はあくまでも担保であり、カウンターパーティーは金利を支払った上で最終的にはAIGに全額戻ってくる。この意味では「カウンターパーティーへの返済」という表現は正しくない。

・多くの国会議員がここぞとばかりに騒ぎ、あのスピード感で課税法案を通してしまう行動力には感服させられるが、「ハイリスク・ハイリターンのデリバティブ取引で大きく損をした」とか「They put their stamp of approval on bad securities products and sold them like gold」とか、実情を理解せずに騒いでいるだけの政治家もいるようだ。

・AIGとCountrywideが訴訟合戦を行なっているようだ。Counterywideがオリジネートした住宅ローンの証券化商品にAIGが保証を付与している案件において、住宅ローンの毀損が大きく進み、AIGはCountrywideがきちんとdue diligenceをやっていないと主張、CountrywideはAIGが保証の履行を拒絶するのは契約違反だと主張、究極の”負け組対決”といったところか、、。

<増加するデフォルト>
CDS関連だけでも、今週はRouse Company, Chemutura, LyondellBasell Industries (Lyondell Chemicalの親会社)がクレジットイベントとなった。このほかにも、AbitibiやSyncora(旧XL)もぎりぎりの局面となっている。正直、名前も聞いたこともない企業もあるが、(Berkshire Hathawayが投資している)High YieldインデックスやXoverインデックスに含まれるようなBB以下の銘柄のデフォルトが急増し、回収率の急低下も目立つ。海外でも日本でもこの傾向はまだまだ続きそうだが、株式市場の一時的な回復の影で、エマージング市場の動向も気にかかる

<CDSのクリアリング>
先週、Intercontinental Exchage (ICE)で初のクリアリングが行なわれた。北米のCDXインデックス(シリーズ10)を参照する取引が91件、グロスで71億ドル・ネットで33億ドル程度とのこと。今回は、新規の取引ではなく、既存の取引が対象とのことで、テスト的な意味合いが強いようだ。欧米では金曜日にインデックスがロールしているが、クリアリングも軌道にのるだろうか。

2009.03.21 | Comments(2) | Trackback(0) | 市場雑感

透明性っていいもの?

 週末に行なわれたG20、ウルトラC的な政策の発表があるわけでもなく(あればとっくに発表している?)、斜に構えて見れば、各国の足並みの不揃いを可能な限り隠すのに全力を尽くしたといった印象が残る。各国の景気のさらなる悪化、保護主義や地域紛争、社会不安の台頭、といった流れは阻止するすべもなく、新しい国際金融システム・産業システム・社会システム等を構築するまでに必然的に生じる痛みを、金融政策や財政政策によってどれだけ和らげることができるか、といったところだろうか。

 声明の中にはお決まりのように「金融市場の透明性拡大」が掲げられていた。政治的にも、透明性の推進を強調せざるを得ないのはよくわかるが、一方で実質的にはあまり意味がないことも事実だ。格付けの問題は複雑で多面的であるが、格付け手法自体は従来から透明性は高く、むしろ原資産のデフォルト率の推定や相関の推定を大きく見誤ったという意味で、格付会社の能力に大きな問題があったように思う。また、格付会社が積極的に開示しているモデルやレポートをきちんと咀嚼せずに利用していたユーザー側のリスク管理体制や、民間企業に過ぎない格付会社の意見をあまりにカジュアルに規制の枠組みに組み込んだ規制当局の規制体制も、いまさらではあるが、改善する余地は大きい。

 クレジット・デリバティブにしても、よく言われるように「透明性がない」ことが問題なのではなく、逆説的であるが、「透明性が高すぎた」ことが今回の金融危機に一役買ったように思う。信用リスク商品の代表ともいえる銀行の融資は、そもそもは銀行のバランスシートに塩漬けとなり、可動性もなく、ほとんど開示義務はなく、価格も不透明で、時価評価も不要で、引当てをする・しないも恣意的で、「不都合な真実」を隠すのには適していた。一方、「不都合な真実」を隠しているうちに状況が改善して、波風立たずに水面下で問題が解決することも多くあったのだろう。

 こうした透明性がない世界に、クレジット・デリバティブは容赦なく透明性を持ち込む。信用リスクの移転を可能にすることで、企業の信用力評価に第三者の視点が入り込み、メインバンクが”ここは健全貸出し先”であると主張しても、市場の総意としてのCDSの市場価格がこれに「待った」をかける。会計的にも時価評価して損益計算書に反映することが義務付けられ、恣意的に引当金や準備金を積む世界よりもはるかに透明性は高い。決算報告書を見ても、今回の金融危機が始まる前から多くの主要参加者はCDS関連の情報を保有社債以上に開示していたし、危機の発生後はどこも詳細な開示を行なっている。

 というわけで、「CDSによって透明性が高まってしまい、隠していた不都合な真実が明るみに出て、大手金融機関は早期に損失処理を迫られ、金融危機が早い段階で顕在化した。だから“臭いものにはふた”をして、時価評価もデリバティブもバーゼル規制も廃止して、透明性をなくして危機を克服しよう」と主張するのであれば、賛成はしないが、うなずける部分もある。ナイーブに「金融市場に透明性を」と主張してもどれだけの意味があるのか、非常に疑問である。

 CDS市場の透明性を高めるという大義名分で推進されているクリアリングの話にしても、前回のエントリーのように、メリットと同時にその限界やデメリットにも目を向ける必要がある。日本でも東京金融取引所と東京証券取引所がCDSのクリアリング導入を検討していると報じられているが、最終的には”小さな日本のCDS市場だけのクリアリング”にとどめずに、より広い視点が必要な気もする。(この2取引所がISDAのメンバーになったことを報じた某新聞の記事には、またまた椅子からずり落ちそうになった。民間の銀行・証券・保険・事業会社・法律事務所などがメンバーである業界団体のISDAに加入することで、日本の取引所にNY連銀の監視が行き届くようになると本気で思っているのだろうか、、、。そもそも、当局がISDAを通じて取引の監視を行なっているということころに根本的な事実誤認がある)

2009.03.15 | Comments(2) | Trackback(0) | 市場雑感

CDSのクリアリング

現在相対で取引が行なわれているCDS市場にクリアリングを導入しようとする動きが活発である。もともとは、サブプライム危機・金融危機が始まる前の2006年頃から民間で検討が始まっていたが、ここ1年ほどは規制当局や政治家からの強い圧力のもとに、作業が急ピッチとなっている。

欧米市場では、現在5つのグループがCDSクリアリングビジネスへの参入の意向を表明しているが、そのうち本命・本丸ともいえるIntercontinental Exchange (ICE)が、3月9日から北米のCDXインデックス取引のクリアリングを開始する準備が整ったようである。ICEは昨年12月にNY州銀行局から、先週はFRBとSECから認可(SECからはexemption)を獲得し、インフラ面でもDTCCやMarkitとの提携やThe Clearing Corporationの買収を行ない、当初メンバーであるJPMやMSなどの大手10社から出資を受けている。

プレスリリースによると、当初はCDXインデックスからスタートし、4月にはシングルネームにも広げるとの意向を表明している。CDXインデックスは現在でも"固定スプレッド"・"2CE"・"固定開始日・固定満期日"とクリアリングに必要な商品性の統一が進んでいるが、シングルネームCDSは4月8日から市場慣行が変更される見込みで、クリアリングも市場慣行の変更待ちといったところだろうか。欧州では、LIFFEが昨年12月にシステムや認可関係で稼動準備を完了したが、現在までにまったく利用されていない。ICEの方は主要ディーラーのサポートが期待できることから、こちらは少しずつでも利用が始まるのだろうか。

クリアリングが導入されても、取引は引き続き相対で交渉・合意される。取引合意後に、「JPM対BNP」という取引が、「JPM対クリアリング」と「クリアリング対BNP」の2つに分解される。重複する取引などは、クリアリングレベルでネッティング・解消されることから、事務効率の改善は期待できる。

クリアリングについては、某大手新聞社などを中心に、誤解されている部分が多い。主なものを挙げると、

・「クリアリングによって銀行等が抱えるCDSのポジションが清算・解消される」

-日本語で"クリアリング"は"清算機関"と訳されることから、不良債権買取機構やBad Bankのようなイメージがあるのかもしれない。AIGに関する記事でも、AIGのCDSはまだ2割程度しか解消されていないとの論説があり、「CDS = 問題の根源 = 解消されるべきもの」との思い込みが伺えるが、当然のように、取引で参照するものによってCDSは"優良資産"にも不良資産"にもなり、AIGについて言えば住宅ローン関連のCDOを参照する"不良資産"だけを現在までに解消したということである。

・「クリアリングによって複雑な取引が整理される」

-クリアリングは最も単純なCDSのみを対象とし、最も単純なCDSを上述のように2つに分解するだけである。

・「クリアリングによって価格の透明性が高まり価格形成が安定的となる」

-クリアリングの値洗いには現在も広く利用されているMarkitのデータベースが使われる。市場参加者にとっては、クリアリングによって価格の透明性が向上するというメリットはない。それに、取引所取引であり価格が"透明"であるからといって、株価の動き・価格形成が安定的になっているだろうか。

・「CDS市場の価格は事実上消えた。クリアリングの導入が待たれる」

-価格が消えたら業界全体で1週間で数万件単位で取引は成立しない。価格が不透明になっているのは、セカンダリー市場が機能しなくなった証券化商品やこれを参照するCDS取引が中心で、こうした取引の市場シェアは小さく、また、こうした取引はそもそもクリアリングには乗らない。

・「現在はクリアリングがないために、市場参加者は互いに疑心暗鬼になって市場は停滞している」

-海外市場では、インターバンク市場での取引量はピークからは落ち込んでいるが、引き続き大手ディーラーは毎日1000件前後の取引を行なっている。

・「クリアリングによってカウンターパーティー・リスクがなくなる」

-クリアリングに参加するのは、大手金融機関が中心であるが、参加者のほぼすべては現在も担保契約付で取引を行なっており、クリアリング導入による追加的なメリットは小さい。

-現在、ISDAのマスター契約によって、当事者の破綻時には、金利スワップ・通貨スワップ・CDSなど、あらゆる店頭デリバティブ取引の勝ち負けが一括清算ネッティングされる。金利スワップで+100、CDSで-100であれば、ネッティングが有効であればプラスマイナス・ゼロで損失は発生しないが、ネッティングが有効でないとCDSでの負け分の100を払わされた上で、金利スワップの勝ち分である100は一般債権者と同じ立場で回収を行なわなければならない。CDSだけをクリアリングという”別枠”に乗せることによって、全体でのネッティング効果は薄れてしまう。CDSのクリアリングが複数設立されると、このネッティング効果はさらに弱まる。

-クリアリング参加者の破綻時には、宙に浮いた取引をクリアリング自身がカバーしなければならない。その際に発生する損失は、クリアリング参加者間で負担することになる。Lehmanの破綻によって、A銀行が100損失を出し、B銀行は損失がゼロだったとすると、クリアリングによってA銀行もB銀行も50ずつ損失を被る、といったイメージである(大雑把な議論だが)。ようは、リスク管理の巧拙にかかわらず、業界全体で均等に損失をシェアしましょうというシステムである。


ということで、クリアリングは万能薬からはほど遠いのだが、数少ないメリットとしては、規制当局が市場全体の動きを把握して、風説の流布やインサイダー取引の取締りなどを行なう際に、クリアリングの情報は有効となる可能性がある。本質が見えていない政治家やアカデミズムやメディアによる的外れな批判が減るのであれば、それも大きなメリットといえるかもしれない。それ以外では、CDSだけのクリアリング導入は、ないよりはましか、逆にネッティング効果を下げてしまいかねない、というのが実際のところであろう。




2009.03.08 | Comments(4) | Trackback(0) | CDS

日増しに見出しは、、

世界は 社会は グロテスク
画面は 場面は グロテスク
やり口 手口は グロテスク
レポーター キャスター グロテスク
日増しに 見出しは グロテスク、、、

 仲井戸さんの1980年代の作品だが、今の金融市場そのものを表している。昨年の今頃は、「サブプライム問題は野球で言えば9回の表くらい」といった楽観論も聞かれたが、今なお先の見えない延長戦を戦っている感覚だ。

 昨日のニュースはAIGが中心で、MBIAの決算やHSBC Finance、GEの話などはかすんでしまった。AIGは第4四半期で617億ドル、2008年通期では993億ドルの純損失と、記録的な数字を発表している。数字に対して感覚がだんだん麻痺してくるのがこわい。

 617億ドルの内訳を見てみると、目立ったところでは、約4割を占める246億ドルが税金や無形資産関連の会計上の損失、67億ドルが昨年行なったABS CDOやsecurities lendingのリストラ等に関する損失、FRBへの利払いなどで100億ドルあまり、市場環境の変化による保有資産の価格下落が259億ドルとなっている。

 保有資産の損失の259億ドルのうち、バランスシート型・アービトラージ型の企業CDOなどのSuper SeniorにCDSで投資したものから69億ドル、CDS以外の形態での投資から54億ドル、負債の時価評価から24億ドル、それぞれ損失が発生している。昨年の第4四半期には政府による支援によってAIGを参照するCDSは大幅にタイトニングしたが、このことがこの期においてはネガティブな影響をもたらしている。

 今朝の新聞は、一面で「クレジット・デリバティブ・スワップ(CDS)」と間違え(正しくは「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」)、「CDSの評価損が響き」、「巨額のCDSが重し」、としているが、上記のように、CDSの形態での取引からの損失は全体の1割程度にとどまっている。また、第4四半期にABS CDO関連のリストラをした関係で、CDSの残高は3723億ドルから2975億ドルへと減少している。学習効果か、「CDSは3700億ドルあるが、重複もあるので実際には数分の一とみられる」と報じているが、AIGのような最終投資家はディーラーと違って売り買いを頻繁に繰り返すわけでもなく、“重複”は大きくない。昨日の決算資料を見れば、グロスで3900億ドル、ネットで29750億ドルとはっきりと書いてあるのだが、この辺までは目が行かないようだ。一番違和感があるのが、「RMBSの残高がXXX、CMBSの残高がYYY、CDSの残高がZZZ」という表現である。RMBSやCMBSがアセットクラスであるのに対して、CDSは取引の形態であり、同列に並べるのはおかしい。CDSによってどんなアセットクラスのリスクをとっているのかが見えてこない。「債券はXXX、ローンはYYY、CDSはZZZ」ならまだ整合性が感じられる。

 だいぶ脱線してしまったが、Super Seniorの内容を見ると、全体の約8割を占める規制資本関連の取引においては、驚くことに原資産のデフォルトは引き続きほとんど発生しておらず、劣後比率も12%~18%あり、見た目はパフォーマンスに大きな問題はないようだ。最初のコールまでの期間が1年前後ということで、想定通りにコールがかかればポジションはかなり軽くなるが、景気の冷え込みが深刻化して、カウンターパーティーである欧米の銀行がコールをかけなければデュレーションが伸びて時価への影響も発生しうる。

 各種報道のように、政府は、最大300億ドルの資本のファシリティの設定、ALICOとAIAの全株式を保有するSPCの優先株と交換に既存のファシリティの260億ドル減額、米国内の生保契約の証券化による85億ドルの調達、250億ドルに減額された既存のファシリティの金利を「L+300(但しLは3.5%がフロア)」から「L+300(フロアなし)」に変更、といった支援を行なっている。格下げによって追加担保の拠出やCPファシリティへのアクセスの遮断が生じるが、Moody’sとS&Pはシニア格付けをA3/A-に据え置き、見通しのみをネガティブに変更した。まさに首の皮一枚である。CEOのLiddy氏は、「流動性はもはや問題ではない」と発言しているが、強気になれる状況からはほど遠い。

 またまた政府の支援を必要とすることになったのは、市場環境の悪化が進んで保有資産の質が劣化したことと、景気後退によって部門の身売り交渉が難航したことが原因と思われるが、今回の支援を行なう前提となった「今後の市場環境の推移」と「部門売却の見込み」がまたはずれれば、将来的に再び救済が繰り返されることも予想される。実際、当局も、市場環境が悪化すれば追加支援の必要性が発生する可能性があることに言及している。

 それにしても、なぜ、ここまで助けようとするのか。昨日のUS TreasuryとFRBの声明によると、AIGは小企業や地方自治体など1億人のアメリカ人を雇用する10万社以上に保険を提供し、アメリカ国内に3000万人の保険契約者が存在し、教職員や非営利団体などの年金を運用し、多くの大手金融機関にとっての重要な取引相手であり、破綻の影響が多大である、ということである。これに加えて、MMFが保有するAIGの債券に損失が発生することもおそれているのだろうか。昨年、AIGを救済したのは、潰すと某大手投資銀行がのっぴきならない状況になるからであると、アメリカの新聞が報じていたが、実態はより複雑な状況のようだ。

2009.03.03 | Comments(2) | Trackback(0) | 決算発表

カウンターパーティー・リスク

 紺ガエルさんの名エントリーに触発されて(?)、カウンターパーティー・リスクについて思うところをいくつか。

<最広義のカウンターパーティー・リスク?>
 あまり一般的な考え方ではないが、カウンターパーティー・リスクを最も広く考え、「取引相手が契約通りにお金の支払いなどを行なってくれないリスク」と整理してみる。

(1) 期間1年の融資をA銀行に10億円出しました、1年後にA銀行が10億円を返してくれるかどうか?

(2) A銀行が発行する期間1年の社債を10億円買いました、1年後に10億円が償還されるかどうか?

(3) A銀行から期間1年の融資枠(コミットメントライン)を10億円受けました、1年後に引き出そうとした時にA銀行は10億円貸してくれるかどうか?

(4) A銀行から、B社を参照するCDSのプロテクションを10億円買いました(期間1年)、B社破綻時にA銀行が10億円の支払いを行なってくれるかどうか?

 上記、いずれの取引を行う上でも、A銀行が1年間債務不履行状態にならないであろうとの判断が必要となる。審査部から「A銀行の信用力を考えれば、期間1年であれば30億円くらいの与信を出してもよい」という許可が与えられれば、現場はA銀行向けに1年30億円の融資を出すことも可能だし、融資を20億円にして社債を10億円買うことも可能だし、はたまた、融資を10億円・社債を10億円・CDSを10億円(A銀行をカウンターパーティーとするプロテクションの買い)と配分することも可能である。

 ここでは、社債と融資と融資枠とCDSを区別する理由は特にないが、CDSでは、B社が破綻した場合に限ってA銀行に支払を行なってもらう必要が生じることになり、A銀行が単独でデフォルトしたからといって必ずしも損失が発生するわけではない。A銀行が破綻することによって、経営に大きなダメージを受けることになるのであれば、それはそもそもA銀行に対する与信の失敗なのであって、CDSが悪いとか、社債が悪いとかといった商品の違いは本質的な問題ではない。たとえば、CDSを使ってLehmanからGMのプロテクションを1000億円買っていて、“保証”の価値が紙くずになったケースと、Lehmanの社債を2000億円保有していた場合では、そもそもLehmanに2000億円与信出した後者の方が審査の罪は重い。

<CDSと他のデリバティブ>
 CDSの商品性を批判する大学の先生の議論で、「カウンターパーティーのデフォルトによって、金利スワップは損失はせいぜい元本の10%から20%であるのに対して、CDSは損失が元本全額になりうる」というものを見たことがあるが、果たしてどうだろう。

 サブプライム危機発生直前から約1年間で、ドルの30年金利は4%程度下落した。30年のドル金利スワップを組んでいれば、時価は将来価値で約29年×4%=元本の116%、現在価値でも元本の100%を上回るほど動いたことになる。10%や20%の話ではない。一方、CDSの損失は元本の100%が上限となる。もちろん、金利スワップでも期間が短ければ短いほど時価の動きは小さなものになるが、CDSでも参照する企業の信用力が高いほど時価の動きは小さなものなる。
 
 教科書的には、他通貨の元本交換のある通貨スワップの潜在的な時価の動きよりも、元本交換のない金利スワップの潜在的な時価の動きははるかに小さいということになり、理論的にはこれが間違っているわけではない。ただし、市場が極端な動きを示す時には多くの金融商品が前例のないような極端な動きを示すわけであり、年限や参照するクレジットの良し悪しと切り離して、CDSという商品がことさらに時価の動きが大きいと一般化するのは短絡的に感じられる。

<CDSで参照するものとプロテクションの売り手の相関>
 参照するクレジットの信用リスクをヘッジする立場であるプロテクションの買い手は、だれからプロテクションを買うか、当然のように神経質になる。GMACからGMのプロテクションを買っても意味がない。現場ではどれだけ神経を使っているか、昔勤務していた大手米系金融機関の例を挙げてみる。

 まずは、リスク管理の約束事として、プロテクションを買う際に、参照するクレジットのデフォルト確率と回収率、取引相手(プロテクションの売り手)のデフォルト確率と回収率、この2社の相関、担保契約の有無などをもとにクレジットチャージを算出して、取引ごとにリザーブを積むことを要求された。この“金融工学的なリスク管理”に加えて、現場のトレーダーの姿勢も非常に保守的であった。

 某メガバンクから、株式保有比率の高いメーカーのプロテクションを買おうとすると、この2社の相関が高いとしてそもそも取引を拒絶される。担保契約があるからいいのではと指摘すると、値洗いの頻度が週に1度であり、このメガバンクとメーカーが共倒れした時に、担保が十分取れていない可能性がある、という理由で取引が却下される。じゃあ交渉して値洗いを日に一度にしてはどうかと問うと、担保がJGBだとしたら、2社が共倒れとなった時にJGBの価値も低下しているかもしれないから、という理由で取引が却下される。じゃあ、どうすればいいのか、と問うと、そもそも日本の銀行から日本の企業のプロテクションを買いたくない、といった反応が返ってくる。
 
 リスク管理やトレーダーの保守性はもちろん会社や人によって異なるが、これくらい厳しくカウンターパーティー・リスクの管理を行ない、今回の危機においても最小限の損失で食い止めた金融機関にとっては、何も知らないメディアや大学の先生から「取引相手が破綻したら保証を受けられないなんてことくらい素人でもわかる」的な批判を受けても、返答に困ってしまうことになる。イチローが野球をやったこともないコメンテーターに「イチローの不振はここが原因」的な指摘をされるようなものか。まあ、市場の拡大とともにリスク管理が人間の嗅覚よりもモデルのアウトプットに頼り、競争の激化とともにカウンターパーティーを甘く見る若いトレーダーが増えていたのは事実だと思うが、、、。

2009.03.01 | Comments(0) | Trackback(1) | CDS

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